グノーシア

最高のゲーム体験ができるSF人狼ゲーム「グノーシア」の感想。
少しでも興味があったら絶対に自分でプレイしてほしい。これはあなたの物語だから。

d-mebius.com


ループもの。人間を消してしまう人類の敵「グノーシア」が宇宙船の中に紛れ込んでいる。グノーシアを探すために乗員は人狼ゲームをする。ループの中で人狼ゲームを繰り返しながら、自分たちがなぜループしているのかの謎と、この世界の真相を探っていく。
で、もうこの時点でおもしろいに決まってるんだけど、このゲームの魅力はキャラクターにある。
ループしているのは主人公ともうひとりの相棒、セツだけ。ループしてしまえば他のみんなの記憶はなくなっているのだけれど、周回によって少しずつ異なる展開が起きていく。ループを繰り返すたびにいろんな出来事を経験することで、わたしたちはキャラクターのことを少しずつ理解していく。

ゲームが終わったら、もう全員のことが好きになってる。
いろんなループを繰り返すたび何度も何度も知り合った君たちのことを、わたしはとてもよく知っているんだ。

Vita版とSwitch版がある。どちらも2000円台。この価格で買うには面白すぎるのでもっとお金を払いたい(設定資料集とか出ませんか!?)

以降の感想は全てネタバレなので読まないでゲーム買ってプレイしてください!後生だから!本当におねがいします!!
ということで、とりあえず一周したところの感想です。
女主人公。細かいイベントは結構拾い損ねているみたいなのでこれから。

君だけがいない世界と、"君"がいる唯一の世界

ノーマルエンディングからの真エンディングが美しすぎた。
好みで言えば「君だけがいない世界で生きていく」ノーマルエンディングが好きなんですが、真エンディングがあまりにも天才すぎんか……。
真エンディングまでたどり着いたとき、セツが話しかけてくれているのはプレイヤーキャラの彼女ではなく、間違いなく、画面のこちら側にいる"わたし"自身であることに気づく。

そしてセツは、これまで一緒に旅をしてきた"わたしだけのセツ"だ。
"わたしだけのセツ"と"わたし"が一緒に未来を夢見ることができるのは、ありとあらゆる並行宇宙が存在する中で、たったひとつ、あの宇宙だけなのだ。

セーブデータという宇宙

セツが銀の鍵を満たすために埋めた最後の特記事項は、プレイヤーキャラの彼女を通して、画面のこちら側にいるわたしの存在を見つけることだった。その瞬間に、このグノーシアというゲームを通して体験してきた物語は、本当に自分だけの物語になる。あの世界に、本当にいたんだ。
こういう現実的なシステムまで物語の中に組み込んで、リアルにゲームをやっている自分自身まで物語のキャラクターになってしまう仕組みが本当にすごい。だって嬉しいよ、セツはプレイヤーキャラの彼女じゃなくて本当のわたしを見つけて、わたしに話しかけてくれてるんだもん。

話は逸れるけど。
昔、初めて書いた二次創作はゲームの夢小説だった。
というかドラクエだったので、喋らない主人公はいたけれど、求めていたのはそうじゃなくて。主人公は物語に必要不可欠な存在だけれど、それとは別で、ゲームの中に本当にわたし自身がいたいと思った。だから自分のキャラクターを作って、原作のストーリーに自分がいる想像をしながら、一緒に冒険した。
なんか、そういう憧れの原体験を本当に実現させてくれたような気がして、すごく嬉しかった。そういうところが素敵なゲームだと思った。

キャラクターみんなのことが大好きになった

ループは巻き戻りではなく並行宇宙なので、会うたびに別のみんながいるのだけれど、ループを繰り返すにつれて友好度が蓄積されているってのが憎い演出ですよね。「会ったことないはずなのに、なんだか知っているような気がする」。そんなん憧れであり希望でしかない、好きに決まってるじゃん。
特記事項を埋めるのがノーマルエンディングの条件だけれど、特記事項に載らないようなところでそれ以外にも小さな会話がいっぱいあって、だからこそ見逃したものもたくさんあるんだけど、そういうどれを知っていてどれを経験していない、なんて差さえも自分だけの物語という真実になってしまう。体験をつくるのがうますぎる……。

過去の宇宙でかばったり仲良くすることで、別の宇宙でもまた少しだけ仲良しな状態で始まるの、嬉しかったな。繰り返したループの数にも意味があるのだと思えるから、うまくいかずにループを繰り返したときもモチベーションが落ちなかった。
初見は攻略見ずにやったけれど、幸運にもジナやSQちゃんのイベントはうまいこと回収することができたので、もうめちゃめちゃ好感度が上がった。好きじゃんそんなの……勘弁してよ。

ジナ、すごく好きでしたね。
健気で真面目なのに毒舌。ギャップがたまらん。
男主人公に生まれ変わったら絶対にジナのヒモになりたい。

SQちゃんは元々第一印象から決めてました!な推しだったので、イベントちゃんと見れたのは本当に嬉しかった。
かわいいよ。愛すべきロクでなしの嘘つきガール。大好きだぞ。
特に女主人公でもあのイベントをやってくれるのは嬉しかった。人間一年生のSQちゃん的には性別どうこうよりも、まず人間としてまっとうに関わることの経験に飢えていたんだろうなあと。
真エンディングまで見るとグノーシアの顔である理由までわかって、回収が美しいな……って膝をつく。
初期メン好きなんだよね。

思ったより好きだったのがラキオ。序盤にシャワーシーンを入れるな、サービスが良すぎるぞ、もっともったいぶってくれ。まるで初日吊られる勢いのごとく、サービスシーンを早々に見せてプレイヤーのモチベを上げてくれるラキオのそのスピード感は嫌いじゃない。
言うて後半はストーリーの核心に関わるし(夕里子さまにアイアンクローされまくってて本当に申し訳ない)、だんだん世話焼きツンデレの素が見えてくるし(問題出されたとき間違えたほうが好感度上がるあたり薄々気づいてたけどやっぱりお前、教えてあげるの好きなんじゃん!)、またノーマルエンディングでは事情を理解できる唯一の存在ということで、多分ノーマルエンディング後のわたしはラキオにセツの話をするんだろうなと思っている。

汎という性別と、肉体と魂のこと

セツは汎性で、恋愛はしないけれど、誰かに心を預けたいという気持ちは感じるらしい。だからセツが自分と恋人だと言って切り抜けたときの説明で、そこにあるのは魂の結びつきだ。肉体の性に引きずられるより、魂で語る関係性のほうが好き。
そうだよね、わたしとセツの関係ってただの恋愛感情じゃないし。わたしがどの性別でも、あるいはセツが汎だから恋愛感情じゃなくても、わたしとセツは互いが大切な存在であることに変わりはない。

肉体と魂の話はグノースの思想である脱肉体・電脳化にも絡むのでこの世界観における主題。このへんは深くなりそうなのでまた思いついたら後日。

グノーシアと舞台全通概念

グノーシアの物語が、演劇の舞台を全通するのと似てるなと思ったという話。

舞台もこの物語におけるループと似ていてる。毎公演やることは同じ。でも細かい部分は日替わりで少しずつ違っているし、公演を繰り返すうちにキャストの演技も変化が出てくる。中日では細かい遊びが入ることもあって飽きない。そして千秋楽でその作品の集大成として、最後にたどり着いた演技を見せてくれる。
そういう「毎回同じようで少しずつ違う」「ループが巻き戻ったときに全てがゼロになるのではなく積み重ねは残る」あたりの感覚が似ている。
公演という単位は平行宇宙だったのか……。

おわりに

引き込まれるストーリーと世界観、魅力的なキャラクターが良い。
でも一番心を動かされるのは、今ここでコントローラーを握って画面を見ている自分自身が物語の登場人物であるというこの体験。一人ひとりが自分の物語を経験してほしいと思える作品。

とりあえずしばらくは見逃したイベントの回収ということで、敗北時に見れるみんなのグノーシア顔を回収したり、男主人公で恋愛イベントを見たり、あとは噂の美味しい水そうめんなど見たいなと思います。
あとは、セツが旅立った後の「君だけがいない世界」で生きているわたし(プレイヤーキャラクター)に想いを馳せるのも楽しい。4ルートくらい分岐書けそう。ジナ、SQ、ラキオ、沙明で。

いや本当に良いゲームだった。ありがとうございました。
あとはやっぱり設定資料集お願いしますどうしてもラキオの身長が知りたいんです……。