メタモルフォーゼの縁側

映画「メタモルフォーゼの縁側」を見てきました。

metamor-movie.jp


17歳の女子高生(うららさん)と75歳の老婦人(雪さん)がボーイズラブをきっかけに友達になり、はじめての同人誌を作ってコミティアに出る話です。超ざっくり。

元々百合漫画として名前を聞いたことがあって、ちょうどなにわ男子の高橋恭平くんが出るというので見てみようかな〜という超絶カジュアルな気持ちでなにわ担と一緒に見に行ったのですが、うっかり爆泣きしてしまいました。頼むから同人誌出したことあるオタクは全員見てほしい……。

うららさんが不安ながらも雪さんに背中を押されて初めての同人誌を作りイベント参加を決めるところ、同人誌を作ったことのあるオタクの心の深いところに刺さってくるんですよね。初めての経験への期待と不安、本を作ってる間に正気に戻りそうになる瞬間があったり、本作るのって楽しい時間ばかりじゃないけれど悪くないなっていう気持ちとか、当日は華やかな周囲のスペースと自分を比較して怖くなってしまったり、それでも本を買ってくれたわずかな人々の存在に救われたり。

そして、原稿に必死に取り組む背中と、なによりも完成した本を見たときの感動。うららさんが経験する初めてのイベント参加のストーリーに、いつかの自分を見てしまう。ちょっとの不安と達成感と喜びがぐちゃぐちゃにやってくるあのときの気持ち、うまく言えないけれどすごくわかるし、なんだかすごく泣きたくなってくる。うららさんはがんばってすごくえらいし、だからあのころのわたしもがんばってたし、わたしたちはキラキラできてたんだよ。

佐山うららさんという、クラスでちょっと肩身の狭い本好きでオタクの女子高校生の表現が上手すぎた。作品として人物描写がすごく丁寧だし、それを支える芦田愛菜さんの演技力が素晴らしすぎる。わたしたちは、うららさんに昔の自分を見てしまう。でも、かつてのわたしたちが恐れていたような否定はなく、優しい世界観なのがほんとーーによかった。

高橋恭平くん演じる紡くん、決してうららさんを否定することなく常に優しく寄り添ってきた、めちゃくちゃ理解ある幼なじみだった。完全に理想のヒロイン。どうして俺にはつむっちがいなかったんだ……(オタク仕草)

わたしは安直な恋愛描写にキレ散らかすタイプなのでこのうらっちつむっちの幼なじみ関係がすごく好きだった。イベント会場に行けず座り込んでしまったうららの初めての同人誌をお金を払って買ってくれた紡、留学に伴い別れを告げられた元カノの飛行機を見送りに行く勇気がなかった紡の手を引いて電車に乗せてくれたうらら。ずっと優しく見守ってきてくれていた紡のことを助けられるようになったうららの変化がすごく愛おしかった。

BLが好きなことを誰にも言えずにいたうららさん。クラスで一番目立つエリちゃんが友達との話題のひとつみたいに軽くBLを楽しんでいる(あるいは消費している)のをずるいと思ってしまったうららさん。変わったのは雪さんと出会ったことだけ。ずっとうららさんの周りのことは変わってなくて、紡はずっと優しかったし、複雑な感情を抱いていたエリちゃんは自分の夢をしっかり持って努力している子だった。

でも、うららさんも漫画を描いてコミティアに出たことで、この世界で生きていけるようになった。BLの話をできる友達ができた。誰とも話せずにいたふたりが出会ってやっと漫画の話をできるようになって、あの縁側で過ごした時間がうららさんを変えてくれた。縁側で笑い合う二人の背中、『メタモルフォーゼの縁側』。タイトル回収が美しくて最高。

雪さんと離れてしまっても、うららさんはこの世界で強く生きていける。この世界でちゃんと息ができるようになった。たった17歳のうららさんの人生にはこれから先つらいことも悲しいこともたくさんあるだろうけれど、うららさんは漫画を描くことを知ったから。生きていく方法を知っているから。

どこか自分みたいなところもあるうららさんのことが大好きになっちゃったな。うららさんのキラキラの未来に幸あれ。

まだこれ書きながらちょっと泣いてる。同人誌作る楽しさ苦しさ素晴らしさが詰まっていて、それをわたしはよく知っていて、見ていたらなんかよくわからないまま声を上げて泣きたくなった。

原作の漫画も読んでみたい。絶対良い。でも芦田愛菜さんの佐山うららさんと高橋恭平くんの紡(超絶顔が良い)を見てほしいのでみんなもぜひ映画館で見てください!