偶像崇拝

わたしはアイドルを偶像崇拝している。アイドルには恋愛してほしくない。認知されたくない。握手会はちょっと行ってみたいけどちょっと怖い。偶然に街中で出会うのは嫌だ。推しの炎上を常に恐れている。

アイドルも人間であるということくらい、本当はわかっている。でもわかりたくない。アイドルはいつでも笑っていてくれる、ずっと遠いところにいつまでもいてくれる、そんなかみさまであってほしいのだ。

アイドルは嘘をついていることを、本当はわかっている。人間なのに、アイドルとしていつも笑ってくれていることを知っている。アイドルがまるでかみさまであるみたいに微笑んでくれるから、わたしはそれをかみさまだと信じたいのだ。

アイドルは人間で、彼らには彼らの人生がある。生きている人間だから、生きている限り変化し続ける。そうして変化した彼らがいつかわたしの崇拝する偶像からかけ離れてしまったとき、わたしは彼らに裏切られた気持ちになって幻滅する。勝手に信じて、勝手に裏切られて、勝手に幻滅する。

そんなわたしの身勝手な信仰に、応援ありがとうと言って笑いかけてくれる彼らのことを、どうしたって、わたしは愛したくなってしまう。